すべて/カワグチタケシ
すべてを知りたいと
思うところから
なにかが終わりながら
なにかが始まる
夕陽が沈む
半袖にも
長袖にも
橙色を映して
前を歩く人の
トートバッグも
紙袋も
橙色に染めて
風は西から吹いてきて
次から次へと
東の空へ抜けていく
すべてを知りたいと
願う
終るなにかも
始まるなにかも
運河が満ちている
橋の上から
かすかな波紋が
運河の底に沈む
何かの存在を示す
その光景は記憶に浅い傷を残す
冷え過ぎた都バスの冷気をまとって
熱帯夜に歩き出す
レコード屋の店先に漏れ出す
君の瞳に恋してる
君の瞳から始めて
ひとつずつ
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