隣に住む人/夏美かをる
するもの達に囲まれた
あなたの穏やかな生活は
他ならぬ奇跡の連続だったという、
純然たる事実から滴る鬼胎(きたい)を
残された片方の胸の奥深くに
そっとしまい込んで
今日もサミーと一緒に散歩に出かける
あなたの揺るぎない第一歩
気まぐれで頼りない
シアトルの冬の太陽が
すかさずあなたを見つけ、
あなたのためだけに
金色の光線をそっと差し向ければ、
ふと透けた背中に浮かび上がる
あなたの凛とした勇気―
その鮮やかな燐光が
サミーの歩みと共に
規則正しく揺れながら遠ざかって
霞にけぶる街の風景に
ゆっくり溶けこんでいった
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