秋の階段/Lucy
 
喪失が押し寄せるいつでもどこでも誰とでも交信できても誰とも繋がらないディスプレイの裏側の暗闇の岸辺に誰もがうちあげられる時
元気でいてください元気でいてください元気で
急速に深まりゆくものは秋であり黄昏であって比喩はない飾るBGMはない

守ろうとしたことなどなかったむしろ囚われこそすれそれを愛という観念夢という観念平和という観念
絶望といい憎悪という進歩といい堕落という信念といい誇りといい自我というそれをその魂の牢獄を

ワタシハジユウニナリタイジユウトイウソノカンネンカラモ

錆びついた鐘のまわりに錆びついた鐘の響きがポロポロとこぼれる記念公園踊る落ち葉をかき乱しては吹き過ぎる風海から空へ巻きあがる雲スイッチをOFFにするともうすぐ隣に冬は来ている窓枠をカタカタ鳴らしている冬以外来るものはないという断定の上に最後の足場は築かれる














(2012年1月刊 詩集「誰にも見えない虹」に収録の過去作。)
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