光の両岸/木立 悟
二つの都市
二つの身体
帆船は消え去り
影が残る
壁だけが
いつまでも熱い
切っても切っても
生えてくる爪の羽
ぬくもりの終わり
雨の終わり
寒さの培養
灰の傾き
蓋に付いたしずくが
器に戻らない
プラネタリウム
座席には星
誤りのまま
今も回る天体模型
時刻表どおりに
巡る蜘蛛の巣
雪を愛でる子は愛されず
上流に置き去りにされてゆく
土と砂の家がさらさらと崩れ
真夜中に道をふさぐとき
灯りはつづき
冬を映し
涙を映し
光の両岸を
まぶしく歩く子ら
声も表情もわからぬまま
明るさのなかに消えてゆく
帆船の重みの分だけ
海の水は沈んでいる
忘れられた言葉の橋をまたぎ
鉛の剣の戦いはつづく
影の柱が連なる径
花を知らない花の遍歴
川を流れる鏡の群れ
源から源へ
銀の記憶を運んでゆく
戻る 編 削 Point(3)