(出口)
十月十日の間
ヒトの腹の中だった
鼓動が高鳴る真夜中過ぎに潮は満ち
溢れ出した僕の
金星と地球を携えた血濡れの姿に
母は泣いたという
その音を最初に聞いたのは
父の耳だった
(入口)
三十三年の間
導き手を探した
街の地下を荒野を海岸を彷徨い
疲れ果て踏み外した崖の下
気が付けば
イサナの腹の中だった
バラバラに散る肉体は暗闇に輝く星になり
最後のヒト欠けになる寂しさに
初めて哭いた
その音がぶつかる反響で
自分を見付け拾い集める
産まれ直す為に
(ふたたび出口)
いくつかの欠片で心臓を創った
いくつかの欠片で耳を創った
目を口を
手足は未だ無く
辿り着くか知らない明日を夢見ている
この産道が続く限り
私が私で在る限り