絶望のあとに/Lucy
行使するために
仕事の帰り
寒々とした小学校の校舎
出入りする人の姿もまばらで
案の定盛り上がりには欠けている
今夜は特に冷え込みがきつい
係の人は寒そうに
コートを着込んでブランケットをひざに掛け
たった一枚の大切な
たいせつな紙きれを僕に渡してくれる
僕は記載台のところまで進んで
そこに置いてある鉛筆で
少し考えてからひとりの候補者の名前を書く
それを二つに折りたたんで
銀色に輝く投票箱の
貯金箱みたいな隙間に落とす
それから
誰に褒められるわけでなく
お礼を言われるわけでもなく
肩をすぼめて
冷え込む夜道を歩いて帰った
たった今僕が書いた名前の人に
僕の想いが届くだろうか なんて
思いながら
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