広島太郎ホーム留守/イオン
 
夕暮れ迫る広島の路面電車で
ホームレスの有名人、広島太郎に遭遇した
少し混みあう車内に乗り込んで来た彼は
青いビニールシートをマントに羽織り
汚れたヌイグルミを首から十数個ぶら下げて
腕時計を何個も着けた腕には黒い垢が浮いており
変な異臭を放っていた

広島太郎は自転車に乗るホームレスのはずで
雨でもないのに路面電車に乗るのは変だ
それに彼は市民に、愛されていると聞いていたが
目の前の現実は、誰もが彼を無視している
混みあう車内でその格好は迷惑だ
だからか、愛されているとは感じなかった

広島太郎は路面電車に乗り込んで
世間を気にしない人を、世間は気にしないと

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