挨拶/北井戸 あや子
おはよう、と世界に挨拶をする
夜を朝が塗り替えている隙に
おはよう、と
返事が無いのは忙しいから
コンクリートを蹴り出す
未明の刹那
口角を歪ませる
少年は裸足のまま
ぶち撒けた
それらは
おはようか
焼け付いた憎しみか
それとも気怠い諦観か
ただひとつ
少年は消えた
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こんにちは
彼女は繰り返す
同じ言葉を
彼女をつくった人が
唯一彼女に教えたものだ
こんにちは
彼女は繰り返す
その意味さえ解らぬまま
機械的に
雨濡れのまま
こんにちは、と
だけど
機械ではないから
雨ざらしでも
彼女は壊れない
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墓守りの老女が
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