背中の上の最終楽章/keigo
 
葉を持たぬ
容器となるのです

間断なく続くフォルティシモ
余計な雑念は吹っ飛ばし
少年は獰猛なライオンとなる

坂の多い町を駆け抜け
海辺へと辿り着くと
キラキラと光るピアニシモの上で
無邪気に水と戯れるガゼルとなる

やがて海の向こうへと旅立つ
渡り鳥となり
いつしか疲れた少年は
モデラートに抱かれ眠る


まどろみの中、僅かに上下する背中で
父に背負われていることを知る

その絶妙なリズムを
決して忘れない少年はきっと
優しい人になるのだろう
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