背中の上の最終楽章/keigo
 

厳かな儀式でもはじまるのか
水を打ったような静けさだ

正面に目を向けると
沈黙を制した魔術師然とした
真っ黒な燕尾服を纏った男が
両肩をいからせる
雄弁なその背中から
鬼のような形相を想像してしまう
他方で
繊細そうな指先には
何か細い針のようなものが
つままれている

次の瞬間
少年は忘れ難い洗礼をうけた
鼓膜を震わせ全身を震わせ
ついには胸の奥から腹に伝わり
五臓六腑へと染み渡る
大音響の波に呑まれたのだ

臆さなければ至上の快楽
100ディシベルの優しさに身を委ねるのです
何も要りません
あなたはこの時
世界の中心となり
同時に言葉を
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