埋めるために1.10/竜門勇気
 
朝の四時ごろ、おばあちゃんが眠れないといって
起きてきて気づいたのよと母が言った
首をさするとだらりとした感触がした
まるで濡れているようだった
溶けた泥のようだった
午前五時の空気がよそよそしい硬さで頭が回るのを妨げる
小さな体をくるんでいるボロ布に手を入れて腹を撫でてやった
途方もなく温かい
どこまでも温かい
足の付け根から黒く冷たい爪までまた丹念に撫でた

口の周りが水に濡れている
少し最期に吐いたみたい 母が口を開いた
透明な水を一口吐いて、彼は死んでしまった
何歳だったっけと呟いて 答えを待つ
彼を迎え入れた日の状況(例えば僕が中学生だったとか、引越しより前
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