ちがうのか/ドクダミ五十号
やさしくなければにんげんじゃない
私は優しいだろうか
決して優しくは無いと
自己認識した瞬間に
人間としての私が崩壊する
だからと言って
自死を選びはしない
「それって自分にやさしいのとちゃう?」
そうかもしれないが
生きる苦痛と安易な死
どちらが人間の精神に於いて重いか
私は苦痛を選ぶ
何もマゾヒストじゃあないが
「おとうちゃん、すき」
絹毛鼠の十匹
人間的つながりが希薄だとて
シルクの様な鼠を撫でているうちは
幸せなのかもしれない
「ねえ?おとうちゃん?あいじょうぶ?」
「ああ、だいじょうぶさ。それよりいっぱいまんまをおたべ」
てのひらで眠る
愛すべき
この小さな命の
速すぎる鼓動を
感じて
「ごめんね」
と言う
私は酷薄だ
戻る 編 削 Point(1)