ループ/keigo
 
がろうとして肩に走った痛みがどうやら生きている証拠のようだ
不意に不安になった私は来た道を商店街に向け戻った

ところがだ
商店街までもどったはいいが
自分が一体どこに住んでいたのかが皆目分からない
石段を登った先にあったのは行き止まりのようであったし
この商店街に戻ってきたのは間違いないと思う
石段から転げ落ちたときにやはり死んでしまったのであろうか?

だが、まてよと思う。
私はこの物語の主人公であるが、
父親も母親もいないし
おぎゃあと生まれた記憶もない
実を言うと自分の年齢も分からないし
自分がどんな姿をしているのかもわからない

要は私は物語の中でしか存在できない人間であり
言ってみればこの物語を作った誰かの頭の中に
閉じこめられているのだ

だとしたら…はやく抜け出したいから
俺の事なんて
綺麗さっぱり忘れてくれないか?


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