雪が好き/シネマホリック
降りしきる雪の中で
傘も差さずに立ち尽くすあの子は
雪が好きなのだろうか
あの子の黒い髪に
はらはらとまきつく白い雪は
あの子が好きなのだろうか
あの子が手のひらを前に出した
あの子の手のひらに
ひらひらと落ちた雪は
じわじわと融けて
さらさらの水になった
そのまま
あの子は
手のひらを
見つめ続けた
そのまま
ずっと
体温を奪われ
冷たくなったあの子の手のひらに
一片の雪が
そっと舞い降りた
融けることなく
ひらりひらり
二片三片
雪が好きなあの子は
喜んでいたに違いない
そのまま冷たい雪は
静かに
優しく
あの子を包んでいった
雪はあの子が
好きなのだろうか
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