門出に/keigo
やわらかな雪が
しんしんと降り積もり
やがて地面の上で固まって
銀世界を作る
凍えるような乾いた都会で
10年にあるかないかの
その奇跡は
まるで初めて君に出会って
恋に落ちた日のよう
胸に浮かぶのは
儚げだけど
よこしまな心を洗い流し
真っさらな白に塗り替えてくれた
あの確かな想い
嬉しかったよ
摂氏0度をさすらう心に
絡めた指先から
確かな温度を届けてくれた
君の優しさ
哀しかったよ
口づける毎に
僕色に染まってゆく
君の無垢な夢たち
ただ繰り返す日常から
臆病風を振り払い
少し冒険したあの日の勇気が
まだ僕の心から奪われてませんように
ここまで一緒に歩いた
その足跡もやがて
降り積もる雪が隠すから
君は何事もなかったように
忘れてしまえばいい
その勇気も今
ここにあるから
君は空を仰いで
あの日の夢をまた歩きはじめて
僕が死んだら君には
わかってしまうかもしれないけど
その時は
雪解けの日のような
透き通った気持ちでいて
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