スプーン/salco
 
ぐったくて気持ちがいい
こんな毛皮を着る自分
それを確認する瞬間が嬉しいのだ
称賛者は一人でいい
最も熱烈で忠実なのはどうせ一人だ
こうして冬じゅう
春先まで女は幸せだった



 夏
誰もが道行く姿に振り向く
アスファルトも溶け出す日射の下
それは何よりも奇異に映る

女は涼しい顔で闊歩する
歳末セールにかけられた北半球中の毛皮が
三月に倉庫へ投げ込まれていようと
見た目だけでも爽やかであろうと髪を束ね
女達が寒色の薄物をひらめかせていようと
待てない
辛気くさいセーターを出す時期までなんて
半年も箪笥に閉じ込めて置くなんて!
華やいだ気分を禁じられ
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