つきのさばく/衣 ミコ
 


砂埃にけぶる視界の片隅
蜃気楼に揺れるあの故郷
滅びても尚地を支配する
星々の暦は古い約束
果たされない理由を求めて
地図に無い砂の道を遡る
馬の鬣を撫でる渇いた夜風
砂にくぐもる蹄の音に
耳を澄まして眠りに落ちる
褐色の砂粒に浮かび上がる
遠い記憶の中の河
あの日訣別した対岸へと渡す
舟がもう今は無い
何処までも
このまま交わる事なく
何処までも
ひとりあの丘を目指して
旅をする途中で
不意に月に手を伸ばす
指先に降りる微かな光
冷えた肌に温もりが
無い事をただ
確かめるように


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