そのとき光の旅がはじまる/yo-yo
乳母車を押して
雪道を祖母が
駅まで迎えにきてくれた
ずっと昔
汽車は忘れるほど駅に止まってたもんや
毛糸玉がだんだん大きくなっていく
古い服が生まれかわって
新しい冬を越す
ぼくの記憶はまだ始まっていない
土手のヨモギは緑のままだった
小さな手はさみしい
さみしいときは誰かの手をもとめる
さみしいという言葉よりも早く
手はさみしさに届いている
温もりをたしかめる
そしてふたたび
手を振ってさよならをする
手にさみしさが残る
重たい引戸をあける
敷居の溝が好きだった
2本のまっすぐな木の線路を
ビー玉をころがし
目的地もなく行ったり来たりして
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)