小人/春日線香
 
玄関に小人がいつまでもいて
眠りから覚めても
いっこうに帰る気配がない

そろそろ暮れたから
森に帰ったほうがいいよ
と耳元で嫁々が歌うと
舌を垂らして片目をつぶる

熱い風呂を焚いて
大根ひっぱって帰ってきても
まだいるので
いいかげんにしなよと怒ると
「あんなありさまでは
 命も長くはないでしょう」
なんて呟いているのが
負け惜しみなのか猩々なのか

水苔の下の闇の中で
玄関に小人がいつまでもいて
眠りから覚めても
いっこうに帰る気配がない
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