祀り/秀の秋
 

  ある土地では人が死ぬと川岸に埋めたのだという。
  その場所で祀りをし骨は年ごとに沈むか時に流失する
  何処に誰が埋められているのかを知る人がいる間は
  祀りは続くが知る人がいなくなれば元の川岸に戻る。

  良いシステムだと思った。
  いまは墓苑団地になり、立派な○○家累代の墓もあるが
  「家」は崩れ始めており、守り手は散って消えてゆく
  そう、墓は憶えられている間だけあれば良いのだろう。

  確かにまだ躊躇いが残ってはいるのだが
  私も自分の墓にこだわることはもうないだろう。
  ほぼ同じ時代を生きた何人かの人が時折思い出すだけの
  一生なのだから。

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