今夜は何を召し上がりたい?/木屋 亞万
 
体せねばならないので、いずれは越えなければならない試練だが、目の前で桃色の短い毛に覆われたこの生き物を骨と肉に切り分けていくというのは、蚤の心臓の僕にとっては蟻が象を食べつくすような途方もない努力が必要だ。

豚をいちばん楽に殺せるのは毒を飲ませるなり打つなりするいうことだったのだが、殺したあと僕がその肉を食べることを思うと、毒が肉に残る可能性が高く危険だ。棒で撲殺するという手や、生きたまま小屋ごと燃やすなんてことも、考えたことは考えたが豚がひどく苦しむだろうことを想像すると、あまり良い殺し方ではないように思えた。

懸命に冷酷になろうとしても、育てた生き物を殺す罪悪感は消えず、別にこのま
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