今夜は何を召し上がりたい?/木屋 亞万
「お前は死ぬことだけ考えていればいいんだ」豚の頭を撫でながらそう呟いた。いずれ僕に食べられる運命なのに、憐れな豚はすごい食欲で飼料を食っている。
どうやって殺そうか。餌をやりながらいつもそのことだけ考えていた。
水の中で溺れさせようか。溺れさせるにしても割と大きく育った豚を沈めるほどの水槽はなく、ぼくがこれからも毎日使うだろう風呂で豚を殺すのも気が進まない。そもそも頭を水につけているときに抵抗されたらひとたまりもない。
ではやはり刃物で。そう考えては見るものの、気が小さい私にとって、血が噴き出したり、内臓が出てきたりということになると冷静でいられる気がしない。これは殺したのちは解体せ
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