乖離の音/ただのみきや
 
わたしはわたしの詩の中から
書いているわたしを見つめていた
ある日それは贅肉を削ぎ落とす行為
やがて臓器を切り売りして
かつて愛したものの首を絞め
部屋中に灯油を撒いた
見限ることにしたのだ
わたしはわたしの詩の中から
世界を見まわしてみた
あれほど憎らしかった喧噪が
夏休み前の終業式の鐘の音か
キリストの再臨を告げるラッパのよう
空白を飛び越え憑依する
猛々しく巨大なグッピー
遠く青く
狼煙が残された



      《乖離の音:2014年11月29日》




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