風船/nonya
 

ものごころがついた頃から
僕はどこまでも透明に近い
風船だった

鳩時計式の心臓から伸びる
静脈と動脈が一番こんがらがったあたりに
震えながら潜んでいる僕自身を
誰もがたやすく見つけてしまった

あらゆる視線は
僕の外側を容赦なく突っついて
その場の空気は
僕の外側を執拗に抑えつけた

その度に僕は
自分の吐いた息にむせ返りながら
内側から風船を
膨らませ続けるしかなかった

そんな僕だったのに
君は気に入ってくれたんだよね
僕の外側を
君は陽だまりのように見つめてくれた
僕の外側を
君はさざなみのように撫でてくれた

それなのに僕ときたら
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