昭和残響伝/salco
 
健さん
坊やには雪駄が要るのでしたよ
とうに廃れた503
そんなものをいまだ穿き
巨乳のアルビノを抱きたがるくせ
面やつれのお杏さんを探している

かほどに行き暮れているのは
待ちあぐねるのでなく
赴く為に生まれ来たのでありますから
懐のドス棄てられずじりじりと
こわれ眼鏡の弦をかけて眺めている
鉄骨とコンクリートで整理整頓された故国(くに)

荒漠に血の暖を欲しがる
そんな坊やが生き抜く地平は
焼土に恐らく大東亜の戦
七十年も遅刻したうえ益体もない健康体にて
一升瓶抱く傷痍乞食のていたらく

黄金バットに焦がれた身なれば
今日も事なしと山の向うに落
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