旅先/青井
 

物売りの少女の垢抜けない媚びと
片言のコンニチハとアリガトウ
舌足らずな母語の響きはかえって
此処は遠い異国なんだと
暗に主張しているかのようだ

付きまとう少女を突き放すため
サディズムを羽織って首を振る
いつか買うよと誤魔化したら
Someday won't come!と
歌うように少女は叫んだ

果物にたかる蝿を打ち払うみたいに
おためごかしの希望を鋳潰す嘆きが
砂埃の舞う路頭で異人の胸を打つ
僕らの肩に木漏れ日が差して
まるで二人で旅をしているようだね

幼さの残る横顔に
非情な世界が淡く頬紅を塗って
引き攣った笑顔がどこまでも美しい
That's right!と僕は笑って立ち去り
君の豊かな絶望に祝福の手を振った


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