戒名/狸亭
1
弟悦章は一九五二年四月二九日
英生院法安育徳童男になった。
母こまは一九七九年一二月一九日
淑生院妙玲郁徳信女になった。
父今吉は一九八三年三月二四日
瑞生院法禅嘉徳信士になった。
さて今度はぼくの順で
幽泉院碧雲詩想居士なんてのを考えてみた。
人が死んだら戒名を付けなければならないのか
ぼくは戒名なんていらないから
戒名代金を詩集の出版費用にしてくれないか。
ぼくは死んでもぼくだから
田貫諦の骨は壷に入れて墓の中に
田貫諦の詩は本にしてできるだけ多くばらまいてほしい。
2
英生院法安育徳童男
淑生院妙玲郁徳信女
瑞生院法禅嘉徳信士
と並んでいるその隣に
幽泉院碧雲詩想居士
と刻んだら可笑しいか
信心薄いぼくだから
戒名なしで
無名詩人の骨ここに眠る とでもするか
いずれにしても
きちんときめておかないと
妻や子供たちが困るだろう。
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