緑から降る/木立 悟
 



木陰に隠れている子が
まぶしげに顔をのぞかせて
空にも地にも鳴りわたる雲
青のこだま
緑のこだまを見つめている



深緑は灰空に深く緑で
遠い雲を映しだしては
雨のはじまりの滴に濡れる
午後から午後へのひとりの道を
雲間の光とともに歩みゆく子



悲しいのはここに在ること
悲しいのはそこに無いこと
道の行き着くところには
緑の花が咲いていて
ひとつひとつが野のようにひらめく



緑から緑がしたたる姿
さざめきつづける緑の姿
緑が緑をさまようように
緑も
緑を見つめるものも
どこまでも緑に流れてゆく



またひとつ
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