ニューハーバー/草野大悟2
張ります。野原さんにお金を返すまで絶対に辞めません」
形だけだから、と野原が差し出した借用書の借用人欄に名前を書いた。保証人になってくれそうな人物はいない。考え込んでいると、保証人欄は空欄でいいから、野原が脱力感を滲ませた小さな声で言った。
うすっぺらな紙だった。『借用書』、と不動文字で印刷された三枚綴りの一枚を持って家に帰った。これまでのモヤモヤが、いっぺんに消し飛んだような気持ちになった。
智子初出勤の前夜、野原は、見知らぬ男に抱かれている智子の姿を思い浮かべ、一睡もできなかった。
翌日、ニューハーバーに智子が出勤すると、そこにはもう、目を赤くした野原がいた。
ソープに
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