ニューハーバー/草野大悟2
のね。当時県庁に勤めていた親父が心筋梗塞で急逝してさ、お袋も体壊して入院して大学どころではなくなったわけ。その時ね、ユタカが、お見舞い、と言って毎月二万円を持ってきてくれたんだ。家庭教師のバイトで稼いだ金を、お袋が亡くなるまで二年間も。心苦しくて何度も断ったんだけど、僕の家の実情をよく知ってるユタカは、いいからいいから、そう言ってお見舞いを続けてくれた。食うや食わずの生活をしていた僕とお袋にとって、それがどんなにありがたかったか」
智子の全く知らないユタカがいた。
「僕は、昼間はファミレスのウェイター、夜はフリーの客引きなどをしながらお金を少しずつ貯めた。その金と、売りに出して三年目でやっと
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