ニューハーバー/草野大悟2
した。
「冬になるとここから流氷が見えるんだ」
「へぇー、流氷ねぇ。私一回も見たことない」
白いコックコートとシェフハットの女が、笑顔を浮かべながらやって来た。
「いらっしゃい。初めまして。和夫がいつもご迷惑をおかけしています。姉の沙羅です」
「初めまして。小野智子です」
智子は、立ち上がって頭を下げた。
「姉貴ここのオーナーシェフ。イタリアの三つ星レストランで修行した後、五年前にこの店をオープンしたんだ」
先程のウェイターが、ワンショットグラスに入った赤い酒を、ワゴンにのせて運んで来た。
「食前酒のカンパリでございます」
真っ白いテーブルクロスの上に赤い酒が置かれる。
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