けむり/ドクダミ五十号
 
およそ六年間
父親だった男が
土曜の深夜
死んだ

涙は出なかったが
哀れだとは思う

涙の出ない目を
えぐり出して
記憶の眼窩の底
かつて投影された
倒立画像を探す
淡い白とハイライトの無い

火葬はたったの数人で
当日は良く晴れていて
煙突から煙が
最後の熱でゆらめきながら
空を登り
ほどけてゆくのが
よく見えたと言う

オヤジ
生きたな
もう偏在している
だから悲しむな
俺も悲しみはしない
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