白鱗/
島中 充
た。少年は身をのりだし、そしてそのまま滝壺に向かって落下して行った。からだが岩にぶつかるたびに白い飛沫に血がにじみ、頭蓋や背骨を折りながら少年は彼方に落ちていった。
堤の少年の家は誰も住まない廃家になった。父は戦争で、母は八月六日終戦の年広島の軍需工場にいた。一九五一年、岩国市を襲ったルース台風で土石流のため家屋は倒壊し、流木や土石を取り除くとその下から長い髪が巻き付いた白い頭骨があらわれた。少年は姉を殺し、床下に葬っていた。
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