悲しみ/吉岡ペペロ
悲しくてしかたなかった
どうしたらいいのか分からなかった
だからひとに電話した
悲しみを伝播させただけだった
この悲しみを詩にしてみようかと思った
でも悲しみの伝播を無責任にしたくなかった
ベッドによこたわっていた
ラジオをつけてみた
氷川きよしがどうやら生で歌っていた
途中声をつまらせ伴奏と歓声だけがながれていた
それで楽になれた
つまった歌を代わりにファンが合唱していたからではない
それがふとつけたラジオから現れるぐらい
どこにでも転がる身近なものだったからだ
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