栞に/竹森
粉雪が
路地裏で密談をしかけては
欠けてゆき
書物の名前を尋ねる人
でした僕は
あの秋
黒髪の少女と
制服を着飾る術を知って
いつまでも
知りませんでした
「おはよう」で始まり
「おやすみ」で終わる
そんな物語だった様な気がします
語るとは目の下の隈を撫でることで
十月の駅に改札口を設置して
「待っていますか?」
と尋ねる度に利き腕を挙げ
かけたあなたは書物を開いて
(ねえ、蛙と水たまり。乾くのはどっちが早いかな?)
いつも同じ
栞を挟んでいましたね
きっと
抜け出せませんでしたが
きっと
書物の真ん中の一番深い窪みを
抜け
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