薔薇の夢見のために/竹森
卓上に散らばる
コーヒーの空き缶に
薔薇を一輪ずつ挿していっても
傾いた地軸を
取り巻く空洞に代わり
充溢すべき季節など
ありませんでした
生きていると
友達を一人ずつ失くし
ていく方法で
遊ぶことだってできました
肌身離さぬ癖に
充電しない携帯電話を
咎めてくれたあの人のために
枕に顔を
うずめたりして
カーテンは靡くもの
絨毯は踏みにじられるもの
そういえばわたし
ピエロが踊るところを
見たことがありません
だからなんだって
話でもないですけど
上の階では
適切な男女がベッドを揺らしています
だからなんだって
話でもないですけど
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)