木綿に描いた鳩ひとつ/藤鈴呼
鉄塔の上に 留まるハト
箒を持った手を休めて あなたが言う
「あすこに ハトが いますよ」
ハトとは 人ごみと駅前と 豆の似合うアレか?
尋ねると 否と笑う
ハトはハトでも フクロウのように
ホーホーと啼く種類が 有ると言うのだ
ほお と 頷きながらも 過去を思いやる
あの 林の中の 群生を 梟だと妄想した
倖せな 日々を 返せと
バリバリバリ
空をも切り裂くような 雷鳴に撃たれたら
死んでしまうから
空を仰いだままの角度で
それが 一番 倖せなのですと
良くも大声で 戯けごとを
我が手元には バリカンなぞ無い
和鋏しか 無いのだ
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