夜更けの紙相撲 霜月あるいは食物月(おしものづき)/そらの珊瑚
 
けていたら、ある日身体がクルミを受け付けなくなったのだ。
はっきりいえば、胃が逆流した。
その日以来今に至るまで、私はクルミが苦手であるし、あの時頭がよくなったという実感がまったくないのが、悔やまれる。
けれどクルミが思い出させるものはどこか温かい。それが根拠のないものであっても、あれこそ親心だったのだと、自分が親になった今とてもわかるのだ。

食べたものが自分の身体を作るってこと、実際そうなのだと思う。
食べたものが血になり肉になり、人間は生きている。
それと同時に食べたものによって、心も作られているのだろうし、運が悪ければ心が壊れることもあるかもしれない。

米はないけどせめて芋だけでもと、子供に食べさせたであろう昔の日本の多くの親の親心。
芋にまつわる物語、それを想像すると、ありふれた芋という根っこが特別なものに見えてくる。

トースターの中で、安寧芋の糖分が元気よくはぜた。



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