更地にかえす/塩崎みあき
 
さよならもうここに残されたいかなるものも認識しない

目に見えるのは常に更地だった
至る所に巡らされた有刺鉄線を触るので
手のひらはいつも傷ついていた
傷が膿むなどという事は
考えつきもしなかった
夕暮れに拾う落穂もなかった

いつもひとりで遊んだ
私は主張すべき場面になるとなぜか黙って
かるく微笑んでいればいいと思うたぐいの人間で
それではキミの心なんてだれにも伝わらないよ
と他人に言われたとき
怒って泣いた

牛という動物が疎ましかった
私と似ているから

この町の申し訳程度の繁華街に
「1/24」という名のバーがある
24時間中の1時間を過ごす場所と
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