その女性は海を見ていた/
秀の秋
その女性(ひと)は海をみていた。
海峡のコンクリート階段の端にひとり
白いフードベストの背を伸ばし
身じろぎもせず。
子供たちが何人か
近くで騒ぎはじめたが
ちらりと見たきり関心を示さず
海を見ていた。
その悲しみのオーラは
愛した人の死を感じさせた。
あるいは今の絶望かもしれない
渦巻く潮の誘いかもしれない。
長い時間のあと、静かに立ち上がり
こちらに来た
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