ぶらんこ/為平 澪
 

ブランコは 逆送する時間を刻む振り子だ
午前零時の数字に消して 短針の行方をくらますたびに、
わたしは、あああああ、という 自分の文字が暗い空で 
流れては溶けてゆくのだけを知る

前にも後ろにも苛まれながら
無くしたスニーカーの片方を
もう片足で見つけなければならない距離を
噛みしめる

夜空の脇腹から剥がされると 
わたしは昇りつめていた坂を さかさまに堕ちていく

朝 わたしは決まって夜の公園で まだ独り 
ゆれていたブランコのことを 思い出すと
いつも座っている椅子を赤く染めてしまう

茜空に消えた白いスニーカー
あの靴が わたしの片割れ

真っ赤に 染まった私を揺さぶる
裸のままで 泣いてる少女

戻る   Point(5)