ビリジアン / 使い古しのチューブを握りしめて/beebee
 
ビリジアン



青みがかった緑色
鮮やかなビリジアンの色見本に
忘れていた記憶を取り戻した


ビリジアンが青色だと思っていた


その主人公は耳が聞こえず
声も出せず
それだけに見えるであろう真実が
彼の絵筆を走らせた
自分はそのすっきりした容貌に憧れた
主人公の才能に憧れた


その画家がヒロインに投げ与えた
ビリジアンの油絵の具のチューブが
青空をバックに彼女の手に落ちる
その情景とともに頭にあって
青色だと誤解していたのだ


確かにその時彼が描いていたのは
青空に負けず繁茂する若葉の塊だった
若々しいエネルギーと新鮮な色合い

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