傘を買う/久野本 暁
 
気づいてはいた 役立たずであることを
取り繕うように卑下しても
傘の内側にへそくりを握りしめて

たとえばそれがぼろぼろのギザ十
ましてやビニール傘だったとして
みんな みんな
自分の足許を踏みしめることに精一杯だ

でもそれを 認めて 悔いを改めて
傘を閉じるような真似が出来たとしたら
こんな時間に出かけようなどと
思うこと自体がおかしいと理性出来ただろうに

必死になってひとり
身を隠すための傘すらも
ひろげるほどでもない
夜半の雨だった
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