青い森の少年/嘉野千尋
 
  青い森の中の小さなベンチ
  腰掛けたままの少年は
  もうずっと切りとられた空を眺めています
  かつて街角の公園だったその場所は
  今では小さな青い森
  時折少年の握り締めた手紙がかさりと
  小さく震えて泣き声をあげます

  少年がさびしいと呟くたびに
  木葉は茂り、枝葉が伸び
  まるで空を切りとってゆくように
  あるいは
  空のすべてを埋めつくすように
  見渡す限りの幾千もの青
  紺碧、群青、瑠璃の葉がさわさわとそよいで


  届けられる手紙の空白にいつも不安を感じました
  返す手紙には、空白など見当たらないほどに
  言葉を
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