小説家と黒猫。/雨の音
 
古い洋館 小説家の男ががただ一人
黒い毛の雌猫と静かに暮らしてる
彼女を膝に乗せながら彼は話を書き綴る
ただただ筆の音がする......

ねぇ此れは君の話ですよ
君が世界を旅した話
君の事は何でも知っているのです
たった一人の愛しい猫さんよ

永遠を手にいれたとしても
まだ見ぬ景色その先を見る事はない
なんとも滑稽で馬鹿らしいが
少しだけ美しき淋しさが其処にはあるようだ

長過ぎる時を越え小説家の男がただ一人
黒い毛の雌猫と静かに暮らしてる
彼女と命を永らえて彼は話を書き綴る
ただただ筆の音がする......

ねぇ此れは僕達の話ですよ
僕達の長い時の話
君の事は何でも知っているのです
幾世紀も側に居るのだから

終わり無き世界を二人だけ
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