人肉鍋/ただのみきや
人たちと一緒に一人でも多く
父さんたちを殺すつもりさ」
「自爆もするのかい」
「カッコいいシチュエーションがあればね」
意識の水面を滑るアメンボ
精妙に配合された媚薬表現
一滴のインクが溶けるように
やがて無尽の情報流砂から
喃語じみた片言
ひと粒ふた粒 拾って握りしめ
僕らは生け花のように殺されていた
互いの瞳に真昼の新月を仰ぐ
孤独な地球の未熟児だった
死の使いの鎌がゆっくりと振るわれるとき
瞑るな 真正面に立って目を見張れ
それは「鎌」ではなく「おたま」
掬われろ
この肉鍋から
救われろ
いつかもう一度子孫たちが
聖なる家族の食卓を囲む日まで
亡者になっても啜るものか
《人肉鍋:2014年10月26日》
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