さかな/裃左右之介
 
りたままの車、このまま乗り捨てたら相当ひんしゅくを買うだろうな。でももうどうでもいいか。
身にまとっている草臥れたシャツが海からの風でパタパタとなびいている。

遠くの海面には何隻かの船が浮かんでいるように見えるがそれが何の為に浮かんでいるのかは解らない。キラキラと波が幾つもの重なりをみ せている。

突然と脈絡もなく車から携帯電話の着信音があたりに響く。
誰からだろう?
ほんの少しだけ誰からの電話か確かめたかったが思いとどまった。もう必要のないことのはずだ。
さっきまで乾いていた肌が汗で湿っていることに気付く。太陽は真上に昇ったところ。
額の汗を左手の甲で拭う。
ぬめっとした
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