さかな/裃左右之介
海沿いの町を抜けると突然道が途切れた。
行き止まりの道の先には砂浜が広がっている。
湿った風が吹いていて気持ちのいい日差しも降り注いでいる。
やっとここに来ることができたのだ、と思った。
いつか来ようと思っていたのに実際は何年もかかってしまった。
恐ろしいほどの怠け癖のせいで言い訳ばかり並べ続けてきたのだ。
ただ単に臆病だっただけとも言えるが。
車の中から取り出したサンダルに履き替えて今まで履いていた革靴は助手席の足元に転がした。
ほんの数歩、車を離れ歩いてみる。
真っ白い砂浜には足跡ひとつなく振り返ってみると自分が歩いた数の足跡だけがある。
誰もいない。
友人から借りた
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