穴/木屋 亞万
 
が出た
口をストローにつけていたので
ちょっと飲んでしまったため気分を害した
水はほぼ無味だったが薄っすら苦味があった

数日後には穴はボーリングの球くらいの大きさにまでなっていた
中は真っ暗で本来見えるはずの壁の向こう側が見えず
ただただ闇が続いていた
奥の様子が知りたくて思わず顔を突っ込んだら
抜けなくなってしまって
みしみしと頭が締め付けられ
少しずつ奥へ奥へと押し進められていく
肩がめりめりと穴に吸い込まれ
顔が熱を持ち
頭に血がたまっていくのがわかった

しばらく気を失っていたが
するんと穴から抜け出た感覚とともに意識が戻り
ぬるぬるする体を大きな手に受け止められた
口を開くと胸へと空気が突き破ってきた
目を開くととてもまぶしい
そうして私は生まれたのだった
以前にいた部屋で何かを学んでいた気がするのだが
その辺りはうまく思い出せない
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