更夜/鮎
深い悲しみを溶かした色をした夜は
音のないいつしみで満たされて静かに
涙に濡れた木々は
かみさまのことを考えるのだろう
夜の底に沈むもののことなど
誰も想起しやしないと
諦めたのはいつの頃だろう
その日から沈没船は嘆くことさえ辞めてしまった
動かない足は
もはや痛むことはなく
歌わない喉は
枯れることもない
ただ時間だけ 時間だけが流れて
子猫が欠伸をする
穏やかな夢は蝶のようにひらりと舞い上がり
そして同じくぱたりと閉じる
泣かないで泣かないでと
遠い記憶の中で
誰かがしきりに髪を撫でてくれた
終息の夜の硝子の寝床で
つめたさに抱かれて
もう 息をすることだって
わすれてしまってもだいじょうぶ と
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